季節を知らせる、小さな便り──祖母から届く絵葉書のぬくもり
季節の変わり目になると、私のもとに一枚の絵葉書が届きます。
送り主は、遠く離れて暮らす祖母。大学生の頃に一人暮らしをはじめて以来、変わらず続いている、私にとって大切な“季節の風習”のようなものです。
郵便受けを開けた瞬間に目に飛び込んでくる鮮やかな色彩と、祖母の文字。
そのたびに、「ああ、もうこの季節が来たんだな」と、やさしく時の流れを教えてくれます。
祖母の絵葉書には、決まった形式がありません。
年の始めには干支の動物が描かれ、夏には涼しげな向日葵や金魚。
秋には丁寧に重ねられた紅葉の赤と黄色があざやかで、冬にはミカンの絵が送られてきて、思わずミカンを食べたくなってしまいます。
祖母は昔から絵を描くことが好きで、その季節に心惹かれたモチーフを、そのまま葉書いっぱいに描いて届けてくれるのです。
葉書の裏には、短い近況の言葉が添えられています。
「仕事はどうか」「友達と行った旅行は楽しかったか」など、ほんの数行のメッセージ。
今年のお正月に「カボチャの煮物のレシピを教えて」とお願いしたところ、次に届いた絵葉書には可愛いカボチャの絵とともに、手書きのレシピまで添えられていました。
長文ではないのに、その一言一言の奥に、祖母の姿や生活の気配が確かに感じられるのです。
電話やメッセージアプリでは生まれない、紙ならではの距離感と親密さ──祖母の絵葉書は、その象徴のように思えます。
届いた葉書は捨てられず、気づけば棚には季節ごとに並んだ小さなギャラリーができました。
同じ季節でも、前年とは少し違う画風や色づかいがあり、祖母がその時どんなことを思い、どんな日々を過ごしていたのかをそっと教えてくれます。
絵葉書は、祖母の暮らしを映す、ささやかな記録でもあるのです。
デジタルでなんでも完結できる時代に、わざわざ葉書を選び、筆を取り、郵便局へ向かう。
その手間こそが、贈り物としての“重み”なのだと、祖母は気づかせてくれました。
紙は、ただ情報を伝えるだけではなく、その裏側にある時間や想いまでも運んでくれる素材です。
また季節がひとつ進めば、きっと祖母から新しい絵葉書が届くのでしょう。
ポストを開ける瞬間の、あの小さなときめきを、これからも大切にしていきたいと思います。
by バイリンガル雀士



